
蓮子:お墓を建てると決めたら、まず何から始めればいいんですか?
博士:やっぱり情報収集だね。それから、基礎知識も必要だよ。
蓮:基礎知識?
博:そう。お墓は大きな買い物だから慎重になるし納得のいくお墓を建てたいと思うものだけど、耳慣れない言葉や決まり事なんかがあるからね。結局よく分からないままにお墓を購入、なんてことにもなりかねないんだ。
蓮:それじゃあ、せっかく建てても後悔するんじゃないんですか?
博:そうならないためにも、情報を集めて知識をおさえておくんだ。ここでは、お墓を建てる際に最低限知っておきたいことを解説していくよ。
蓮:はい!よろしくお願いします!
都道府県、市町村などの地方自治体が管理・運営している墓地です。申し込みや問い合わせは、各都道府県庁や市町村役場になります。
公営墓地は、墓地にとってもっとも重要な永続性が保証されており、かつ、永代使用料や管理費が安く抑えられています。また、自治体が管理していますから、宗旨・宗派による申し込みの制限など宗教的な制約は一切ありません。
ただし、取得に関してはいろいろと条件がつきます。たとえば、現住所がその自治体にある、お墓の承継者がいる、遺骨があるなどです。募集に関しても随時行っているわけではありませんし、募集があっても大抵は希望者が多いために抽選制で、購入は困難なのが現状のようです。また、大規模開発のところが多く立地の面で不便なところも少なくありませんから、申し込みにあたっては十分な注意が必要です。
原則として、公営墓地は生前に購入することができません。また、先に挙げたほかにも購入の条件が付く場合があります。募集時期や詳しい条件については、各自治体の担当の課に直接問い合わせて下さい。
大抵はお寺の境内にあり、その寺院が管理している墓地のことをいいます。
寺院墓地の取得には、そのお寺の檀家になることが前提となっている場合が多くあります。ですから、初めて取得する場合には、必ずそのお寺の住職にお寺の行事など、お付き合いの仕方について確認しておいた方がよいでしょう。また、住職の人となりについて、信頼できるかどうかも考慮に入れる必要があります。
お墓が境内にあるということから法要を本堂で営めますし、いつでも回向読経を依頼できるなどの利点が挙げられます。それによって、新たな安らぎを手にすることもできるでしょう。
仏教用語で“布施をする人”の意味で、護持会費や寄付などによってお寺の維持に協力する俗家のことです。また、住職との交流や寺院の行事などへも参加し、そうした活動を支えていく役割も担います。
宗教法人がお寺の境内以外で経営している、または財団法人や社団法人といった公益法人が運営している墓地です。
公営墓地に比べると永代使用料や管理費などは多少割高ですが、遺骨の有無などで申し込みに制限がつけられることはほとんどありません。宗旨・宗派については限定するところとしないところがあり、墓地によってはお墓のデザインや大きさなどを自由に選べる場合もあります。
霊園によって、設備や規定はまちまちです。また、集合墓や個人墓など、お墓の形式もさまざまなので、まずは自分がどんなお墓を建てたいのか、ということを考えてから墓地探しを始めるのがよいでしょう。
「墓地、埋葬に関する法律(墓埋法)」が制定される以前に造られた墓地ですが、現在も機能しているところもあります。村落墓地は村落の住民が共有していた墓地、個人墓地は私有地に造られた個人の墓地のことを指します。現在、新たに墓地を造る場合には都道府県知事の許可が必要となっていますので、こうした墓地を新しく造ることは難しいでしょう。
蓮:墓地の種類だけでもいろいろあるんですね。
博:そう。だから、最初に自分の求める墓地の条件を挙げて、それにあったところを探すのも一つの方法だと思うよ。
宗旨・宗派の条件は霊園・墓地によってさまざまです。自分の属する宗旨・宗派は何か、今後どうしたいのかなどを考えて決めていきましょう。
ちなみに、在来仏教に限ってどの宗派でも構わないという墓地もありますが、その場合は仏教以外の宗教では購入できないということになります。また、仏教系新興宗教では購入できない場合もありますので、確認しましょう。
やはり、自宅からお参りに行きやすいのがいちばんでしょう。たとえ、すぐ近くに求めることができなくても、交通の便がよければ案外時間がかからずに行けたりするものです。お墓までどんなルートで行けるのか、車、電車、バスなどをよく調べましょう。また「駅からバスで5分」でも、そのバスがあまり走っていないのでは便がいいとはいえませんから、交通機関の本数にも気を付けましょう。
◆交通条件・最寄り駅から墓地までの所要時間・電車やバスなどの運行時間・タクシーの有無
◆墓地周辺の地形、道路の状況
墓所を求めるには、永代使用料、管理費、墓石代が必要です。そのほかに開眼供養や、納骨がある場合には納骨料など諸経費もかかります。費用がどういう内訳でどれくらいかかるのか、あらかじめ管理事務所や石材店に聞いておいた方がよいでしょう。
墓地の環境としては、日当たりや風通し、水はけのよいところがよいでしょう。また、山間部を造成して墓地にしているところでは、大雨などのときの地盤についても調べておけば安心です。
管理事務所や駐車場、休憩所、法要設備など、諸設備の有無や規模はとても重要です。また、墓地全域を平坦設計にするなど、お年寄りや車椅子の方でも無理なくお参りできるように配慮した霊園も増えています。墓地は長くお付き合いしていくところですから、パンフレットやチラシだけでなく実際に行ってみることが大切です。
墓地では、管理者が定期的な清掃や見回りにあたりますが、管理事務所がなく管理人もいない墓地では清掃や備品の管理が行き届かない場合もありますので、管理体制についてもあらかじめ調べておきましょう。
蓮:お墓の形式って、どういうことですか?
博:お墓を、入る人を基準に考えたものだよ。家族墓とか個人墓、夫婦墓という分け方だね。
蓮:そういったお墓は、どこの墓地でも建てられるんですか?博:お墓によっては、建てられる墓地と建てられない墓地があるよ。だから、これにこだわりたいのなら事前にどんなお墓にするか決めてから、墓地を探した方がいいだろう。
家族を祀り、子孫へと受け継がれてゆくお墓です。現在どこの墓地でも見られるもっとも一般的な墓所で、遺骨を納めるたびに墓誌または墓碑の裏面・側面に戒名や法名、俗名などを列記していきます。
永代供養墓、合葬墓ともいわれる、承継者のいない人や承継を前提としない人を祀るお墓です。遺骨の納め方としては、一定期間は個々の骨壺に納めて祀る、最初からほかの人の遺骨と一緒にして祀るなどのタイプがあります。
個人を祀るお墓です。本人以外の人が入ることはありません。故人の功績や趣味などを表した、個性的な形の墓石が多く建てられています。また、自分の好きなものや思い入れのあるものを形にし、生前に建立する人もいるようです。
夫婦を祀るお墓です。子供がいない、娘ばかりで皆嫁いだなど、お墓を継ぐ人がいない夫婦が二人で入ります。和型や洋型といった一般的な墓石のほか、自筆の文字を刻んだり自然石を使用した墓石もあり、個人墓同様、個性的な墓石も建立されています。
二つの家を一つのお墓に祀ったものです。長男、長女同士の結婚や一人娘の結婚などで、お墓を承継していく人がいない家族が増えたことによって造られるようになりました。墓石には、両家の姓が刻まれます。
友人や信仰を共にする人々を祀ったお墓です。あまり多くは建てられていませんが、これまでとは違う形態から注目されているお墓です。
博:お墓を買うというと「お墓を建てる土地を買う」と考えがちだが、実はそうではないんだ。
蓮:でも、お墓を建てるのは家を建てるのと同じじゃないんですか?
博:それが違うんだ。お墓を買う際に取得するのは、あくまでもその土地を永代に渡って使用できるという使用権であって、土地の所有権ではないんだよ。詳しい説明をみてみよう。
一般にいう「お墓を買う」とは、正しくは「墓地の経営主体(宗教法人など)と、お墓を建てる土地の永代使用権を取得する契約を結ぶ」ということです。永代使用権とは、永代に渡ってその墓所を使用できる権利のことで、それぞれの霊園や墓地にある「使用規定」が契約内容となります。
そして、その権利を取得するためにかかるのが永代使用料です。墓所を使用したか否かにかかわらず納めた永代使用料の返還はないものとなっていますから、管理側に権利を返還しても永代使用料は戻りませんし、永代使用権を転貸したり転売することもできません。
土地を買うのではない
蓮:それじゃあ、たとえば墓所だけを買っておいて、お墓を建てる頃になって気が変わって別の霊園にしたいと思っても、その墓所を売ったりしてはいけないんですか?
博:そういうことだね。墓所を買うときに交わした契約には、「この墓所を永代にわたって使用できるのは、契約者と承継者のみです」という内容が含まれているはずだから、その場合、他の者が使用しては駄目なんだ。
墓地を購入すると、定期的に管理費を支払うことになる場合がほとんどです。管理費の支払い方法は、1年ごと、5年分を一括など、霊園によっていろいろなので、確認しましょう。
また、管理費の未納が何年か続いた場合、永代使用権が取り消しになったりすることもあるので、契約の際には使用規定をよく読んで十分納得した上で契約することが大切です。
蓮:使用権の取り消しって、具体的にはどういうことですか?
博:霊園や寺院によって措置の取り方は違うから一概にはいえないけど、例えば3年間管理費が支払われない場合は墓所を更地に戻し、遺骨は集合墓や無縁墓、納骨堂などに移すといった規定がある墓地もあるよ。
蓮:それでは、契約するときには使用規定の内容をよく確かめることが大切ですね。でも、契約書や承諾書ってなんだか難しそうで、ついざっと目を通すだけになっちゃうんですよね。
博:分からないことがあれば、石材店やお寺の住職などにどんどん質問することだよ。墓所契約を結ぶということは「使用規定の内容を了承しました」ということだから、あとで「知らなかった」じゃすまないからね。
博:各墓地や霊園にはそれぞれ、その墓地を使用するための規定がある。これが守れない場合は使用を認められなかったり、墓所の返還を求められる場合があるんだよ。
蓮:それは、公営墓地でも寺院墓地でも、民営霊園でもですか?
博:細かい決まりはそれぞれの墓地によって違うけど、使用規定自体はほとんど全ての墓地にある。決まりがないままで管理を維持していくのは、とても困難なことだからね。
使用規定は、墓所契約の内容となるものです。内容をきちんと確認し、分からないことは説明を求めるなどして十分に納得した上で契約することが、後々のトラブルを防ぎます。
・墓石建立の際、墓石の購入や施工をその霊園の指定した石材店に依頼する。(公営墓地以外)
・墓所購入後、定められた期日内に墓石もしくは外柵の施工をする。
・墓石の大きさや形に制限がある。
・墓地の使用権をほかの者に譲渡、転貸することを認めない。
博:納骨手続きとは、遺骨を埋葬するために踏む手続きのことだ。
これには、新しい仏さまの場合に火葬場から発行してもらう火葬許可証(埋葬許可証)と、お墓の引っ越し、つまり改葬をする場合に必要な改葬手続きの二つがある。法律にも関係する大切なことだから、順番にみていこう。
人が死亡した場合、役所で市区町村長に対して、死亡診断書または死体検案書を添えた死亡届を提出します。その際、火葬許可の申請も併せて行います。
発行された火葬許可証を火葬場に提出し、火葬後に許可証を返還してもらいます。それを納骨予定の墓地・霊園管理者に提出すると、納骨・埋葬ができます。
遠くに引っ越してしまったため、お墓を守っていくことができないなどの理由により、お墓を移すことがあります。これを改葬といいます。
改葬には市区町村長の発行する改葬許可証が必要です。法的な制約はこの許可証のみですが、旧墓地の管理者にはおかしな誤解が生じないよう、改葬に至る経緯を誠意を持って説明しましょう。また、親族との話し合いも欠かせません。お墓を他へ移すことに拒否感を持つ人もいますから、後からもめることのないよう事前に親族の方々の理解を得ておきましょう。
蓮:そういえば、お墓を購入した人(名義人)が亡くなると、その墓地の持ち主は誰になるんですか?
博:墓地は法的には「祭祀供養物」となっていて、慣習に従って祭祀を主宰する者が承継するんだよ。
蓮:たとえば、配偶者や長男ですか?
博:一般的にはそうだけど、お墓の建て方も多様化している時代だからね。今までのような“お墓を継ぐ”とは違った承継の仕方も出てくるんじゃないかな。
まぁ、お墓の承継については法律にもあるので、ちょっと見てみよう。
系譜、祭具及び墳墓の所有者は、前条の規定(※)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継する。2)前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。(※)前項の規定とは、第八九六条[相続の一般効力]のことである。
博:この法律を見ると、お墓を承継する人は血縁や相続人に限らず、祭祀を主宰する人とされていることが分かるね。
蓮:それじゃあ、親しい友人や師弟関係にある人でもお墓を継ぐことはできるんですか?
博:もちろん可能だよ。ただ、承継してほしいと思っている人が他人の場合は特にそうだけど、その本人や親族の同意をあらかじめ得ておいた方がいいだろう。
それに、大半の墓地では転貸や譲渡、転売が禁止されているから、寺院・霊園管理側に無断で他人への承継を行うとトラブルになることもある。だから、こちらにも事前に説明しておくことが大切だね。
他人が承継者である場合、その旨を遺言状にはっきりと記し、葬儀の喪主などもその人に務めてもらった方がよいでしょう。また、その承継者が亡くなったときのことも含め、細部に渡って取り決めをしておくと安心です。